まさかのCM出演

2000年、時は世紀末。世間はコンピューターが誤作動を起こすと大騒ぎでしたが、私はなぜか
「2000円札」の発行が思い出に残っています。
財布の中でいつも違和感、使えない機械も多く、あっという間に目にしなくなりましたよね。
今でも「記念」として保管してはいますが。

それはともかく、私自身の話題としては、個人としてのメディア出演が再び増えたことがあります。
きっかけとなったのは、2000年の初めに放送された『課外授業　ようこそ先輩』というNHKの番組です。
母校の小学校の子どもたちに、特殊メイクの仕事について伝える内容で、目を輝かせて見入る子供たちには
心洗われました。

そしてこの番組が、思ってもみなかった仕事につながります。『ようこそ先輩』を偶然見て下さった
CMディレクターが、「エプソン」のCMの構想中で、私を使った企画を思いつかれたようでした。
打診されたときは「企画が決まったらお引き受けします」と返事しましたが、
この業界、企画が立ち上がっては消えるのは日常茶飯事。本当に決まるとは思いませんでした。

CMは、子供3人に妖精の特殊メイクする過程を撮影するもので、私自身も
「特殊メイクアップアーティスト・江川悦子」として出演。
撮影日までの時間があまりなかったため、妖精3人の製作準備に追われ、撮影当日は疲れ切って目が
真っ赤な状態でした。目藥を差し、目もとにパックをし、元気ではつらつと見えるメイク(特殊メイクでは
ありませんよ)を施し何とか撮影を終えました。
カラフルな衣装をまとったかわいい妖精達に囲まれて、とても楽しい思い出に残る仕事になりました。
CMのお仕事はたくさん手掛けてきましたが、自分が出演するとは。まさに人生いろいろです。

21世紀を担う人材育成

子供の頃、21世紀は夢の世界として映画に描かれていました。それが現実になると思うだけで
わくわくしました。自分が生きている間に、20世紀から21世紀へ移行する瞬間を体験できたのは感激でした。

そして、私たちに「未来」の世界を見せてくれた映画の世界に、今身を置いている。
なんとも感慨深いものがあります。

映画の世界では21世紀初め、『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズが人気を博し、
特殊メイクの技術に注目が集まりました。
その流れをうけてか、日本映画界にも、特殊メイクが盛んに取り入れられるようになりました。

それは、特殊メイクアップアーティストを目指す若者たちの増加にもつながります。
私にとって、2000年代は、さまざまな作品もさることながら、次世代の特殊メイクを担う若者たちへの教育に
力を入れはじめた時期として印象に残っています。

縁あって、1999年から専門学校・東京ビジュアルアーツで、特殊メイクの顧問に就任。外部講師数名の
チームで授業を進めました。
日活芸術学院でも、特殊メイクコースの講座を持つようになり、弊社スタッフも講師として参加、新人育成にも微力ながら協力するようになりました。

現在は、私が教えた生徒が映像業界で活躍するようになり、偶然、同じ撮影現場で元教え子に会うことも
あります。すっかり撮影現場に解けこんで、テキパキ働く姿を見るのはうれしいものです。